箱庭ブログ
鶯歌の日々色々
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「コウカンコ」後編(ハルサツ)
昨日ここにUPしたバレンタイン話の後編です。
後はハルとサツキが話せばいいだけだから短めに仕上がると思ったら、気づけば昨日UPした分の約2倍くらいの長さになっていました…。あれ?
よろしければ下の「コウカンコ」後編をクリックして続きをどうぞ。
後はハルとサツキが話せばいいだけだから短めに仕上がると思ったら、気づけば昨日UPした分の約2倍くらいの長さになっていました…。あれ?
よろしければ下の「コウカンコ」後編をクリックして続きをどうぞ。
「コウカンコ」後編
サツキを部屋に入れてしまうと、セバスチャンはさっさと退室して部屋の扉を閉めてしまう。
そうなると、広い部屋の中とはいえ、ハルとサツキは二人きりになった。
驚き黙り込んでいるハルに、サツキは徐に窺うようにして話しかけてくる。
「………」
「…あの、メール、したんだけれど…」
「…え?」
サツキの言葉に驚いて仕事机の方に歩み寄り、その上に置かれている自身の携帯をハルは手にとる。
確かにサツキから、予定と在宅を確認するメールが一通来ている。
しかし携帯が手元にある状態でサツキからのメールを見過ごしたとは考え難く首を傾げれば、よく見れば来た時間は丁度台所にいた時間だ。
ついさっき部屋に戻ってきたばかりのハルは、それで見過ごしてしまったことに気づいて茫然とする。
「…ごめん。…携帯の近くから、離れてて…」
ハルがそう謝罪の言葉をしどろもどろに口にした時、彼の方ではなく別の方を向いていたサツキははと彼の方に顔を戻した。
「…う、ううん、いいの。私こそ、返信がないうちに訪ねてきちゃってごめんなさい…」
申し訳なさそうにするハルにサツキは慌てて弁明して、逆に謝ってくる。
サツキが尋ねてくれるのはハルにとって大歓迎の事態で謝られることではないのだが、ハルの気持ちを知らないサツキにとっては相手の都合構わず訪ねてしまったという思いになっているのだろうとハルも察する。
サツキが訪ねてきてくれて嬉しいのだと、そう言いかけて、だけれど臆病な気持ちがその言葉をハルに飲み込ませる。
「…ええと…」
サツキが謝ることじゃない、じゃあどういうことだと言えばいいのだろう。
「…今日は、どうしたの?」
結局迷った末にハルの口から出てきたのは、無難な言葉になった。
しかしハルにそう尋ねられると、サツキはじっと考え込むように俯いてしまう。
「………」
「…早坂さん?」
じっと黙り込むサツキを心配して、ハルは再びサツキの近くに歩み寄り、彼女の顔を覗き込むように呼びかけた。
「…ええと…」
ハルに声をかけられ、サツキは少し後ろめたそうな様子で自分の持っているバックの中に手を伸ばすと、その中から本を取り出した。
ハルにとって、見覚えがある本だった。
「…これ、ありがとう…」
「…ああ…、…うん…。どうもいたしまして…」
以前サツキにハルが貸した本だった。
今日が何の日か関わらず、サツキがハルを訪れてくれた理由がやっとで分かって、ハルは安堵半分、残念半分な気持ちにさせられる。
「そ、それからこれ!」
それでも微笑を浮べてサツキから本を受け取ったハルの意表をつくように、再び勢いよくバックに手をいれたサツキは何かをハルの手元に押し付けてきた。
「………」
「そ、その、い、いつもお世話になってます…」
「…ああ、うん…。その、こちらこそお世話になってます…」
サツキがハルの手元に押し付けてきたのは、可愛らしい小さな包みに入っている何か。
驚き茫然と手元を見ていたハルは、それを渡した時のサツキの顔が赤く染まっていることに気がつかない。
中身は分からないが、この状況には多少覚えがあった。
数年前の、学生時代のあの時と既視感が重なる。
そしてサツキの口から出てきたのは、その渡された包みが持つ意味。
予想通りだとはいえ、ハルはやはり先ほどより更に勝った残念感を感じざるをえなかった。
それでもぎこちなく、どこか外れたお礼の言葉を口にする。
渡されるとしたら、義理チョコ以外にありえない、分かっていたことではないか。
そう残念さを感じる自分に必死に言い聞かせながら、なんとか気を取り直して顔をあげた。
「…ありがとう。大事に食べるね…」
「う、ううん。…その、本当は、迷惑じゃ…」
「そんなことないよ。…すごく、嬉しい…」
例え義理だとはいえ、サツキからこの日にもらえたことがハルにとって嬉しいことは事実だ。
そのことを素直に口したのに、サツキは不安そうに俯いてしまう。
「…でも…」
サツキが何に拘っているのかが分からず、ハルは困惑を感じる。
するとサツキは、徐に俯いたまま口を開いた。
「…その、テーブルの上の…」
「…え?」
サツキに指摘されたのでハルはテーブルの上を振り向くと、そこには先ほど運んできたばかりのマフィーの幾つか皿の上に置かれていた。
「…ああ…」
あれがあるから、サツキは自分の持ってきたものも食べるのは大変だろうとでも思ったのだろうか。
もしどちらかを優先して食べなくてはならないのなら、自分で作ったものよりサツキにもらったものを優先させるに決まっているのに。
もっとも、そんなことをサツキが分かっているはずない。
それなら、とハルはサツキが後ろめたくなくなるようにと少し頭を回した。
「…じゃあ、あれは君が食べてくれる?」
「え?」
ハルの提案に、サツキは驚いて顔をあげ、茫然とハルを見つめてくる。
「…その、よかったらで、いいんだけれど…」
サツキに見つめられ、ハルは照れて顔を逸らしてしまった。
「…本当にいいの?」
だからサツキが泣きそうな不安そうな顔でそう尋ねたことも、分からない。
「うん…。どうせ、作ること事態が目的のようなものだし…」
「………え?」
ハルの言葉に、サツキは唖然とした言葉を零した。
その言葉を聞いてハルがサツキを振り返ると、サツキは驚いたように眼を瞬かせている。
「…ええと、前に言ったこと、あったよね…?」
サツキには以前、小説を書くことに煮詰まった時に菓子作りをやることがあると、知られたことがあった。
そのこと思い出しハルは確信はあるもののサツキの驚き様が大きかったので、不安そうに尋ねる。
「…うん…」
サツキは未だに驚きが抜けきれない様子ながらも頷いてくれたので、ハルは安堵の息をついた。。
「…よかった…。…じゃあ、ソファーに座っておいて。何か飲み物を…」
その時、再びハルの部屋の戸が外から叩かれる。
「子息。飲み物をお持ちしました」
「…ありがとう…」
外からかけられたセバスチャンの声に、ハルはどこか釈然としないような気持ちにさせられながらも礼をいい、部屋の戸を開いた。
ハルに見送られ日下部邸を後にした後、山から下りたところでサツキはやや肩を落とした。
…せっかくの、機会だったのに…。
ハルがお菓子作りをすることは、確かにサツキは知っていた。
だけれどよりによってこの日に、ハルの部屋にあるチョコ味の手作りの品を見たら、その可能性が頭の中からすっかり消えていた。
だからせっかく持ってきたチョコも、義理だと必死に誤魔化して渡してしまったのだ。
聞けばアキナに言われてわざわざチョコ味にしたという。
何気に妹思いのハルらしいと思う一方で、何もこんな日にと思わないこともなかったが、それ以上にやはり自分の迂闊さがやや悲しい。
ハルの作ったチョコマフィーはおいしくて、食べながら話した時間も楽しかったけれど。
サツキは再び小さく溜息をついた。
これは、やはり自分なんかがハルに告白するのは分不相応だということなのだろうか。
サツキは泣きそうな気持ちになりながらそんなことを考えた。
…でも、まだもう少し、想っていてもいいよね…?
心の中でそっと、互いに同じことを互いに問いかけたことを、二人はまだ知らない。
サツキを部屋に入れてしまうと、セバスチャンはさっさと退室して部屋の扉を閉めてしまう。
そうなると、広い部屋の中とはいえ、ハルとサツキは二人きりになった。
驚き黙り込んでいるハルに、サツキは徐に窺うようにして話しかけてくる。
「………」
「…あの、メール、したんだけれど…」
「…え?」
サツキの言葉に驚いて仕事机の方に歩み寄り、その上に置かれている自身の携帯をハルは手にとる。
確かにサツキから、予定と在宅を確認するメールが一通来ている。
しかし携帯が手元にある状態でサツキからのメールを見過ごしたとは考え難く首を傾げれば、よく見れば来た時間は丁度台所にいた時間だ。
ついさっき部屋に戻ってきたばかりのハルは、それで見過ごしてしまったことに気づいて茫然とする。
「…ごめん。…携帯の近くから、離れてて…」
ハルがそう謝罪の言葉をしどろもどろに口にした時、彼の方ではなく別の方を向いていたサツキははと彼の方に顔を戻した。
「…う、ううん、いいの。私こそ、返信がないうちに訪ねてきちゃってごめんなさい…」
申し訳なさそうにするハルにサツキは慌てて弁明して、逆に謝ってくる。
サツキが尋ねてくれるのはハルにとって大歓迎の事態で謝られることではないのだが、ハルの気持ちを知らないサツキにとっては相手の都合構わず訪ねてしまったという思いになっているのだろうとハルも察する。
サツキが訪ねてきてくれて嬉しいのだと、そう言いかけて、だけれど臆病な気持ちがその言葉をハルに飲み込ませる。
「…ええと…」
サツキが謝ることじゃない、じゃあどういうことだと言えばいいのだろう。
「…今日は、どうしたの?」
結局迷った末にハルの口から出てきたのは、無難な言葉になった。
しかしハルにそう尋ねられると、サツキはじっと考え込むように俯いてしまう。
「………」
「…早坂さん?」
じっと黙り込むサツキを心配して、ハルは再びサツキの近くに歩み寄り、彼女の顔を覗き込むように呼びかけた。
「…ええと…」
ハルに声をかけられ、サツキは少し後ろめたそうな様子で自分の持っているバックの中に手を伸ばすと、その中から本を取り出した。
ハルにとって、見覚えがある本だった。
「…これ、ありがとう…」
「…ああ…、…うん…。どうもいたしまして…」
以前サツキにハルが貸した本だった。
今日が何の日か関わらず、サツキがハルを訪れてくれた理由がやっとで分かって、ハルは安堵半分、残念半分な気持ちにさせられる。
「そ、それからこれ!」
それでも微笑を浮べてサツキから本を受け取ったハルの意表をつくように、再び勢いよくバックに手をいれたサツキは何かをハルの手元に押し付けてきた。
「………」
「そ、その、い、いつもお世話になってます…」
「…ああ、うん…。その、こちらこそお世話になってます…」
サツキがハルの手元に押し付けてきたのは、可愛らしい小さな包みに入っている何か。
驚き茫然と手元を見ていたハルは、それを渡した時のサツキの顔が赤く染まっていることに気がつかない。
中身は分からないが、この状況には多少覚えがあった。
数年前の、学生時代のあの時と既視感が重なる。
そしてサツキの口から出てきたのは、その渡された包みが持つ意味。
予想通りだとはいえ、ハルはやはり先ほどより更に勝った残念感を感じざるをえなかった。
それでもぎこちなく、どこか外れたお礼の言葉を口にする。
渡されるとしたら、義理チョコ以外にありえない、分かっていたことではないか。
そう残念さを感じる自分に必死に言い聞かせながら、なんとか気を取り直して顔をあげた。
「…ありがとう。大事に食べるね…」
「う、ううん。…その、本当は、迷惑じゃ…」
「そんなことないよ。…すごく、嬉しい…」
例え義理だとはいえ、サツキからこの日にもらえたことがハルにとって嬉しいことは事実だ。
そのことを素直に口したのに、サツキは不安そうに俯いてしまう。
「…でも…」
サツキが何に拘っているのかが分からず、ハルは困惑を感じる。
するとサツキは、徐に俯いたまま口を開いた。
「…その、テーブルの上の…」
「…え?」
サツキに指摘されたのでハルはテーブルの上を振り向くと、そこには先ほど運んできたばかりのマフィーの幾つか皿の上に置かれていた。
「…ああ…」
あれがあるから、サツキは自分の持ってきたものも食べるのは大変だろうとでも思ったのだろうか。
もしどちらかを優先して食べなくてはならないのなら、自分で作ったものよりサツキにもらったものを優先させるに決まっているのに。
もっとも、そんなことをサツキが分かっているはずない。
それなら、とハルはサツキが後ろめたくなくなるようにと少し頭を回した。
「…じゃあ、あれは君が食べてくれる?」
「え?」
ハルの提案に、サツキは驚いて顔をあげ、茫然とハルを見つめてくる。
「…その、よかったらで、いいんだけれど…」
サツキに見つめられ、ハルは照れて顔を逸らしてしまった。
「…本当にいいの?」
だからサツキが泣きそうな不安そうな顔でそう尋ねたことも、分からない。
「うん…。どうせ、作ること事態が目的のようなものだし…」
「………え?」
ハルの言葉に、サツキは唖然とした言葉を零した。
その言葉を聞いてハルがサツキを振り返ると、サツキは驚いたように眼を瞬かせている。
「…ええと、前に言ったこと、あったよね…?」
サツキには以前、小説を書くことに煮詰まった時に菓子作りをやることがあると、知られたことがあった。
そのこと思い出しハルは確信はあるもののサツキの驚き様が大きかったので、不安そうに尋ねる。
「…うん…」
サツキは未だに驚きが抜けきれない様子ながらも頷いてくれたので、ハルは安堵の息をついた。。
「…よかった…。…じゃあ、ソファーに座っておいて。何か飲み物を…」
その時、再びハルの部屋の戸が外から叩かれる。
「子息。飲み物をお持ちしました」
「…ありがとう…」
外からかけられたセバスチャンの声に、ハルはどこか釈然としないような気持ちにさせられながらも礼をいい、部屋の戸を開いた。
ハルに見送られ日下部邸を後にした後、山から下りたところでサツキはやや肩を落とした。
…せっかくの、機会だったのに…。
ハルがお菓子作りをすることは、確かにサツキは知っていた。
だけれどよりによってこの日に、ハルの部屋にあるチョコ味の手作りの品を見たら、その可能性が頭の中からすっかり消えていた。
だからせっかく持ってきたチョコも、義理だと必死に誤魔化して渡してしまったのだ。
聞けばアキナに言われてわざわざチョコ味にしたという。
何気に妹思いのハルらしいと思う一方で、何もこんな日にと思わないこともなかったが、それ以上にやはり自分の迂闊さがやや悲しい。
ハルの作ったチョコマフィーはおいしくて、食べながら話した時間も楽しかったけれど。
サツキは再び小さく溜息をついた。
これは、やはり自分なんかがハルに告白するのは分不相応だということなのだろうか。
サツキは泣きそうな気持ちになりながらそんなことを考えた。
…でも、まだもう少し、想っていてもいいよね…?
心の中でそっと、互いに同じことを互いに問いかけたことを、二人はまだ知らない。
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